「ヴァッツ」 触れる手、唇、そんなものよりも何よりも、その声がオレを焦がした。 じりじりと世界の燃える音を聞いた レティー、と息も絶え絶えに名を呼べば似合わない優しさをもった手で頭を撫でられる。 熱に浮かされるこの感覚はあまり好ましくはなかった。ぐずぐずと融けてしまう錯覚。 だけどその手が、本当に珍しいから。その珍しさを味わうためだと思えば、 ああ、やはり遠くで音がする。 (こころすら焦がして、そうして潜む真実には気付けない)