冬の夜に


冷たく鋭い夜の空気に、日向は身をすくませる。
暖かいコンビニから出ると外の寒さは余計厳しく思えた。
「さっむっ!」
「あー、さむっ!」
日向とほぼ同時に伊月も叫ぶ。
すると日向はじろりと隣を歩く人物を見、そして彼の持つビニール袋を睨む。
「んなもん買ってそんなこと言ってんな」
伊月はちょっと首を傾げて、それってアイスのこと?と尋ねる。
日向は無言で首を上下に動かした。
「こんな寒いのに、なんでアイスなんだよ」
そう言う日向の手にはピザまんの入った袋。
「……アイスは冬がナイス」
「……さむっ」
日向の呟きは果たして気温か伊月の発言に対してか。その時、歩く弾みで伊月の手が日向の手に触れた。
「う、わ」
途端日向が驚きの声を上げながら伊月の手を掴む。
「伊月の手、つめたっ。何でこんなつめたいんだよ」
「日向は温いな」
「そうか?自分じゃ分からん」
ぎゅっと日向の手に力がこもる。離す気はないらしい。
伊月は笑ってそれを握り返す。
それから取り留めもないことを話しながら、二人は夜の道を歩いた。
ぽかりと浮かぶ月がぼんやりとそれを照らしていた。

(090219)


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