黒兎様──
あの時、そっと頬に手を当てて顔を近づけるあの男を拒まなかったのは何故だったのだろうか。
払いのけるのも、何をするのだと殺す事も容易かった。
目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのはあいつ。
そう、何故拒まなかったのか。
それは気まぐれであったはずだ。
ただ覚えているのは、今にも消えてしまいそうな、あの男の苦しげな顔だ。

そんな感情など知らない
(090317)



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