「馬鹿だなあ」
「うるせー」
背中から伝わる土田の体温が優しい。
先ほどから馬鹿だ馬鹿だと言うこの男。だけどそれが優しさからくるものだと知っているから、日向は土田に敵わない。
「頑張りすぎだよ」
「別に。ふつーだし」
頑張っている、つもりはない。自分の力の及ぶ範囲で行動する、それだけだ。
ふつーかぁ、と土田の間延びした声に、思わず頬が緩んだ。
こういうところが敵わないなと思わせるのだ。
「もうちょっと余裕持っても、いいと思うよ」
自分はそんなに張り詰めているだろうか、と日向は心の中で土田に尋ねる。
「まあそういうところが、日向のいいとこだけどな」
何のてらいもなく言ってのける土田。
そういうところがお前のいいとこだよ、とは言わなかった。
何だか眠くなってきたので、日向は土田の背に体を預け、目を閉じる。
「後で、起こして」
とろりと全身を包むのは安堵にも似た睡魔。
ああ、疲れていたのか、と日向は頭の片隅で呟いた。


陽だまりの背中


日向君とこんな関係だと嬉しい(090701)



inserted by FC2 system