課題を進める手を一時中断して時計に視線を向ける。真夜中。
コーヒーでも飲もうかと立ち上がり、それから何気なくカレンダーを見た。
もう三日。後二日。気付けば日にちを数えている己に、ヴァンツァーはひっそりと溜息を吐く。
それを拾うものはいない。当然だ、ここはヴァンツァーの部屋で、今は一人なのだから。
勉強熱心な学生の皮を被った金の死神以外にこの部屋に来るものはいない。
いたらいたで落ち着かないし気に障ることもあるし煩わしいのに、いないのが続くと落ち着かない。

つまりは、そういうことなのか。

我ながら遅すぎる、とぼんやり考えながら、しかし自覚したところで相手があれではどうにもならないと思う。
とにかく今することと言えばコーヒーを淹れて課題を続けるのみ。
ふとあの飴色の目を思い出して、ぽつりと独り言。
「悪趣味、だな」


つまりはそういうこと。

(090828)















「よーうヴァッツ。久々だな」
「……帰って来たのか」
「なんでそう嫌そうな顔するんだよ、お前は。つれねーなぁ」
「……」
「……またえらく不機嫌だな。どうしたんだよ」
「別に」
「あ、オレがいなくて寂しかったとか?」
「……」
「そのどこまでも呆れ果てた目で見るの止めてくれねえ?」
「もし、」
「ん?」
「そうだと言ったら?」
「は?」
「……」
「いや、どういう意味だよ。というか何笑ってんだよ」
「変な顔だと思ってな」
「お前が珍しく変なこと言うからじゃねえか」


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