結局欲しいものはなんなのだろうか。
死神は飴色の目を細めて自問するが答えは出ない。
虚ろを抱く藍色にキスをした。その目が死神を介して見つめるものを壊したくなった。
(永劫叶わぬ望み)


命じられたことをこなすことしか知らなかった存在は、最近になって物事を取捨選択し、放棄することを覚えた。
「ヴァッツ、課題は?」
「後でいい」
夜を思わせる目がレティシアの目を覗き込み、そしてキスをねだる。
これは不味い。
囚われきってしまいそうだ。
(熱を孕む)


お前は何も言わないんだな、と言われて何のことか分からず首を傾げると、つまらなさそうに唇を尖らせるのでその狂暴な中身を知っているにも関わらず可愛いなどと思ってしまった。
(好きだよ)


「惚れた弱味かねえ」
「オレが知るか」
金色の狼はしまりなく笑う死神に向かって吐き捨てた。
のろけは大概にしてもらいたい。
(憂鬱)


「お前……ほんとに変わったぞ」
疲れたように溜め息を吐く銀色を眺める。
藍色はきょとんとした顔をした。
「ほんとに!あれでいいのか?」
危険極まりない、と叫ぶ銀色に、こいつも変わったなと藍色は呟いた。
(心配)


普段は抑揚のない低い声が、焦りを含んだかすれた声で名を呼ぶものだから、眩暈にも似た感覚を覚えた。
(欲情)


もう目を塞いで耳を閉じているわけではない。
目の前の男に理解の及ばぬ範囲があると分かった上でここにいる。
珍しくもひどく真面目な顔で触れてくるのが、無性におかしかった。
(見てくれたね)


そして滅多に見せないような柔らかな微笑みを見せるものだから、無性に泣きたくなった。
(愛してる)



そして永遠を抱く(091028)

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