その青い目を見て、ケモノのようだと今吉は考えた。
ケモノの、孤高の、王。

「今吉サン、何考えてんの」
確かめるように触れられて肌が粟立つ。
それを感じ取らせないよう自然に、今吉は微笑する。
「何もあらへんよ」
「ふうん」
「──ッ、」
青峰が首筋に噛み付いた。ブツ、と皮膚が切れる。
ほんまケモノやな、と呟いた。
「嘘吐き」
憎たらしい笑みを浮かべて、青峰は今吉の眼鏡を奪った。
視界がぼやける。
今吉は眉を顰めて手を伸ばした。
「こら、何すんの。返し」
「いいじゃん、要らないだろ、コレ。今からは」
獲物を前にしたケモノは凶暴な青い光で今吉を貫く。
それを真っ直ぐに受け止めてしまい、今吉は怯む。
(眼鏡、返してえな)
この男の礎は何だろう、と唐突に考える。
彼が何処にいるのかは今吉には分からない。
一生分からないかもしれない。
いっそ解体出来たらいいのに。そうして青峰を構成するパーツを綺麗に並べて観察するのだ。
「今吉サン」
今吉は、笑った。
青峰は不機嫌な光を浮かべて、今度は今吉の肩口に噛み付いた。



きみの内膜をぼくが撫で上げてあげる
群青三メートル手前(歪愛十題より)
(091028)


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