髪を撫でる。さらさらで、綺麗な髪だと思った。自分の硬い髪とは大違いだ。
でもきっとこいつの性格からして手入れしているわけではないと思う。
指の間を通り抜ける感覚が心地よい。
飽きずに繰り返していると、楽しいですか、と日向の胸に背を預けた黒子が問う。
「楽しいっつーより、気持ちいい。髪さらさらだな」
「そうですか」
「うん、伊月みたい」
途端彼はぐる、と体の向きを変えて、日向に向き直った。
それから伸し掛かるように日向の肩に手をつく。
「日向さん」
「え、な、なに」
黒子はジッと目を覗きこむ。その迫力に気圧されてしまう。年下に気圧されるなんて情けない話だが、それでもこれには逆らいがたい。
「ボクといるときに、他の人の話は嫌です」
真剣な面持ちで言われた一言に、思わず目をぱちくりさせる。
冷静沈着かつ淡白な、この後輩の一言。あまりにも予想外な言葉だったので、理解するまで時間を要した。
彼の発言は、つまりは、
「……独占欲?」
「はい」
「お前が?」
「ボクにあっちゃ、おかしいですか?」
珍しくも不機嫌そうに表情を変えて、視線を逸らす黒子。
予想外だけど、不快ではない。じわじわと胸を満たすのは喜びと愛しさ。きっと今、顔は赤い。
思わずにやけてしまいながらその小柄な体を抱き寄せる。
「日向さん?」
「ちょっと、いや、かなり。嬉しいかも」
なんかもー、可愛い、と呟けば日向さんの方が可愛いです、と不貞腐れたような声。
無性にキスがしたい。



思ってるより、ずっと

好きですよ、と囁く彼の声が好き(091029)




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