例えば廊下ですれ違った時。
あいつが友人と仲良く談笑してるのを見ると、何となく面白く、ない。
一緒のクラスだったら良かったのに、って。
そう考える自分を自覚して自己嫌悪する。
昼飯だって大抵一緒だし、部活も同じ。下手をすれば、あいつの家族よりも長く一緒だというのに。

(好きになってから、ますます強欲になってる、オレ)

「ずっと一緒にいたい」
オレが言うと、日向は目をまん丸にした。
「なんだよ、急に。ほとんど一緒じゃねーか」
「クラス違うじゃん」
オレはぐっと膝に力を入れてブランコを漕ぐ。
季節も変わり、肌寒くなってきた夜に付き合ってくれる日向はいい奴だ。
日向はブランコの柵に腰掛けて、オレが振り子のように揺れるのを目で追った。
「クラス違うとさ、色々、一緒には出来ないし。すぐには会えないし」
「でも会おうと思ったら会えるだろ、普通に」
日向はとことん呆れた顔だった。
こういうときは不安になる。
オレが想っているほど、日向はオレのこと好きではないんじゃないか、と。
(想いの大きさなど比べようないけど)
でも、そんなオレの不安を吹き飛ばすように、彼は笑う。
「それに、こうやって二人でいるときはさ、余計嬉しくないか?」
ぎゅん、とブランコが前に振れると同時にそんなこと言うから。思わず手を離してしまった(あ、)。
冷たい空気を切るのと同時に、今まで抱いてたキタナイ考えも落ちていく。
その感覚は、きっと忘れられないだろう。
「伊月!」
「いてて……」
格好悪くも着地には失敗した。地面にべったりと尻をついている。
意図せずブランコから飛び出したわけだから、情けなくもまあ仕方ないよね、と自分を納得させる。
「大丈夫かよ」
「鍛えてるからへーき」
「着地失敗すんなら飛ぶなよなあ」
「日向の所為だから」
「は、オレ?」
「でも、許す。むしろ感謝?」
「頭打ったのか?」
割と本気で尋ねてる。訝しげな表情の中、心配の色を浮かべるその目が好き。
「日向、好きだよ」
にっこり笑って手を広げれば、途端嫌がる顔をしたので無理矢理腕の中に抱き込んだ。
照れ屋だけど、口で何だかんだ言うわりに日向は割りと甘えただから、逃れようとはしなかった。
オレも好きだよ、なんて耳元で囁いてくるから油断ならない。

ブランコから飛翔
(091118)


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