初めて会った時、その眼に宿る何かに立ちすくんだ。
初めてそいつの殺戮を見たとき、技量の凄まじさに驚いた。

「あーあ、死んでらぁ」
つい先程まで馴れ馴れしく話しかけていた仲間の行者が物言わぬ骸となったとき、レティシアの第一声はこれだった。
あまりにもあっけからんと、何の重みも篭っていないその口調。
綺麗に二分されたその死体はレティシアの銀線によるものだった。
彼は突っ立ったままのヴァンツァーに視線を寄越す。
その目が語るのは、『気をつけないとお前もこうだぞ』、だろう。
今自分がこうして生きているのはたまたまだ。もしかしたら地面に伏しているのは、あれではなく自分だったかもしれない。
そうであったとしても、この男は自分はヴァンツァーを見下ろして変わらぬ言葉を口にしたに違いない。
自分なら、どうだろう。
敵によって絶命するならまだしも、仮にも仲間を自分の手で殺してしまったとすれば?
少なくとも、この男のようにここまであっけからんとはしていられまい。
ヴァンツァーは背筋に寒気が走るのを感じながらもレティシアを見詰め返した。
彼の瞳はあまりにも危うすぎる、心の深くまで揺るがしそうな光を放っており、慌てて目を逸らす。
分からない、そう思った。
この男は危険すぎる。

あれから何度この男を恐れ、嫌悪を抱いただろうか。
その度にヴァンツァーは視線を向けてはあの目を恐れて逸らした。
理解の出来ない人格だが、狂っているわけではないというのも恐ろしいところだ。
彼はひたすらに赤い道を歩いている。自身は清いまま、骸を踏みつけて。
その姿に恐れを抱きながらも惹き付けられている自分がいることをヴァンツァーは自覚していた。
レティシアを危険だと感じる要因はそこにもあった。単にその技量と性格だけを恐れているのではない。
纏う気配が死神のそれだからだろうか、奥底で絶望する心が否応なしに反応させられるのだ。
もし、と思う。
もし、答えが見つかったなら、その時は──死神に殺されるのもいいかもしれない、と。

(いつになるのだろう)

 い つ か 、



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