ごう、と風が吹く。
屋上は意外と風が強かった。
柵にもたれて校庭を見下ろす。昼練をしている運動部の掛け声がいやに耳障りだ。
コンビニで買ったパンを口に運ぶ。何だか味気無い。
目を刺すような青空に眉をひそめた。
「いーづきー」
思わず溜め息を一つ。出来ることなら、今はあまり顔を合わせたくなかった。
だから一人屋上に出たというのに。
振り返ると、日向が笑うのに失敗した顔をしていた。
うまく笑えていないことに、気付いていないのか。
何だ、日向も会いたくなかったんじゃん。
日向は隣に来て、伊月と同じように柵にもたれかかった。
「なに、どうしたの」
自分の声の冷ややかさに驚く。
日向は気にしたそぶりもなく、校庭を見下ろしながら口を開いた。
「練習、こねえの?」
いきなり本題か。
カキン、と野球部のこ気味いい音。
何も答えることが出来ず、伊月は柵を背に座り込んだ。
日向はそれ以上何も言わない。
目を足元のコンクリートに向けた。
ボールの跳ねる音、バッシュが床を踏みしめる音、掛け声―――。
ぎゅっと持っていたビニール袋を握りしめた。
「……こいよ」
いつまでもそうしちゃいらんねーぞ。
言われずとも、分かっている。退くか、進むかしかない。
それだけ言って、立ち去ろうとする背中に声をかけた。
「日向、バスケ、好き?」
振り向いた、顔。
口が、ゆるゆると弧を描く。
皮肉げな表情。
「そんなこと、聞いてんな」
冷たい声。
ガシャン、とやや乱暴にドアが閉まる。
何だ、と伊月は笑った。
ほっとしたのか悲しいのか悔しいのか嬉しいのか分からない。

何だ、まだお前も転んだまんまじゃないか。


白日の

(090522)


inserted by FC2 system